冬の花壇が寂しくなる時期に、葉牡丹は色を持ち込んでくれます。花が少ない季節に、赤や白の大きな株が並ぶだけで景色が変わります。
丈夫で手がかからない植物ですが、育てた人がいちばん戸惑うのは春先です。形よくまとまっていた株が、年明けから急に上に伸びはじめます。そのまま置くと形が崩れ、捨ててしまう方も少なくありません。
この記事では、苗の選び方から種まき、日々の手入れまでの基本にくわえて、伸びてきたときにどこを切るかを整理します。切り方しだいで、翌年はもっと見ごたえのある株になります。
葉牡丹とは|冬の花壇の主役
葉牡丹はアブラナ科の植物で、別名を牡丹菜、ハナキャベツともいいます。キャベツやケールの仲間で、花が咲いているように見える部分は葉です。寒さに当たると葉が色づき、中心から順に赤や白、桃色に染まっていきます。
もともとは食用として日本に伝わり、江戸時代のあいだに観賞用として育てられるようになりました。正月飾りに使われるのは、紅白の色合わせがそのまま祝いの色になるためです。
色づくのは気温が下がってからです。暖かいうちは緑のままなので、買った直後に「色が薄い」と感じても心配は要りません。おおむね最低気温が10度を下回るころから、中心の葉が内側から染まりはじめます。地域によって色づく時期がひと月ほどずれます。
なお、葉牡丹の花言葉と誕生花は〈葉牡丹の花言葉と誕生花〉にまとめています。
種類の選び方
葉牡丹は葉の形で大きく4つに分かれます。選ぶときは色より先に葉の形を決めると、仕上がりの印象が定まります。
| 系統 | 特徴と向き |
|---|---|
| 丸葉系 | 葉の縁がなめらか。牡丹らしい重なりで、正月飾りの定番 |
| ちりめん系 | 縁が細かく縮れる。名古屋ちりめんが代表格で、質感が出る |
| 切れ葉系 | 葉が深く切れ込む。孔雀葉とも呼ばれ、軽やかな印象 |
| フリンジ系 | 縁が細かく波打つ。洋風の寄せ植えに合わせやすい |
このうちちりめん系は、名古屋を中心に改良が進んだ系統です。縁の縮れが深く、離れて見ても葉の質感が出るため、和の飾りに合わせたときのまとまりがよくなります。一方の丸葉系は東京を中心に育てられてきた系統で、輪郭がはっきりしているぶん、紅白のコントラストが強く出ます。
草丈も品種で大きく違います。寄せ植えの中に入れるなら草丈の低いミニ系、花壇の主役にするなら高性種を選びます。苗の札に草丈が書かれていることが多いので、買う前に確認してください。
苗の植え付けと寄せ植え
苗の選び方と植え付けの時期
苗が店頭に並ぶのは10月ごろからです。下葉が枯れておらず、株の中心が詰まっているものを選びます。徒長して茎が見えている苗は、そのあとも形が崩れやすくなります。
葉の裏も見ておくと安心です。青虫やアブラムシが付いたまま持ち帰ると、そのまま花壇に広がります。葉に穴が空いているもの、白い卵が並んでいるものは避けてください。
植え付けは10月から11月ごろ。色づく前に植えておくことが大切です。すっかり色づいてから植えると根が張りきらず、寒さで傷みやすくなります。
地植えとプランター
日当たりと水はけのよい場所を選びます。地植えなら株間は30〜40cmほど。プランターは65cmの標準サイズに3株が目安で、ミニ系なら4〜5株入ります。土は市販の草花用培養土でかまいません。
寄せ植えの組み合わせ
葉牡丹は形がはっきりしているので、寄せ植えでは主役になります。同じ時期に出回るパンジー、ビオラ、シロタエギク、アイビーなどと合わせやすい組み合わせです。
正月向けにするなら、紅白の葉牡丹に南天やハボタン以外の常緑を添えると、飾りとしてまとまります。色を足すというより、葉牡丹の重なりを見せる配置にすると収まりがよくなります。
寄せ植えで失敗しやすいのは、葉牡丹を鉢の縁に寄せてしまうことです。株が横に張るので、中央か少し後ろに置いて、手前に背の低い花を回すと形が決まります。
種から育てる
種まきは7月から8月。冬に見ごろを迎えるためには、真夏にまく必要があります。葉牡丹は「冬の花」ですが、準備は夏に始まります。
ポットや箱にまいて薄く覆土し、発芽したら間引きます。本葉が4〜5枚になったらポットに移し、9月から10月に定植します。まく時期が遅れると、色づく前に寒さが来て小さいまま止まります。
日常の手入れ
置き場所
日当たりのよい屋外で育てます。葉が色づくには寒さに当てることが必要なので、室内に取り込むと色が出ません。霜が降りる地域でも屋外で越冬しますが、強い寒風が続けて当たる場所は避けます。
水やり
地植えなら根付いたあとはほとんど不要です。鉢植えは土の表面が乾いてから与えます。冬は乾きが遅いので、湿ったまま与え続けると根が傷みます。株の中心に水がたまると傷みの原因になるので、株元へ静かに注ぎます。
肥料
ここが葉牡丹でいちばん間違えやすいところです。色づきはじめたら、肥料は完全に止めます。色づく時期に肥料が効いていると葉が緑のままになり、期待した色が出ません。追肥は植え付けから10月ごろまでにして、そのあとは切り上げます。
用土
水はけがよければ土は選びません。市販の草花用培養土でそのまま育ちます。地植えで土が重い場合だけ、腐葉土を混ぜて水はけを整えます。培養土や道具のそろえ方は〈花の育て方に必要なもの|道具・培養土・肥料ガイド〉にまとめています。
伸びてきたらどこを切る|とう立ちと踊り葉牡丹
年が明けて暖かくなると、株の中心から茎が立ち上がってきます。これをとう立ちといいます。葉牡丹はアブラナ科なので、春になれば菜の花によく似た黄色い花を咲かせます。

切るか、切らないかは目的で決まる
「葉牡丹は切らなくてよい」と書かれることもあれば、「切り戻しが必要」と書かれることもあります。どちらも正しく、目的が違うだけです。
- 一年で終わりにするなら、切らずにそのまま。花を咲かせて終わります
- 翌年も楽しむなら、花が終わったころに切ります
切る位置と時期
切るのは4月から5月ごろ、花が終わったあとです。伸びた茎を、株元から10〜20cmほど残して切ります。葉を全部落としてしまわないよう、下のほうに葉を数枚残すのが目安です。
切ったあと、残した茎の途中から脇芽が複数出てきます。これを育てると、1本の茎から小さな株がいくつも立ち上がる姿になります。
踊り葉牡丹という仕立て方
この、脇芽がいくつも立ち上がった姿を踊り葉牡丹と呼びます。伸びて形が崩れることは失敗ではなく、次の仕立てのはじまりです。茎が曲がりながら伸びるので、一年目の整った株とはまったく違う趣になります。
夏のあいだは風通しのよい半日陰で管理し、秋にまた色づくのを待ちます。2年目の株のほうが姿に動きがあり、好んで作る人もいます。
伸びてきたときの判断はこの2つだけです。今年で終わりにするなら切らない。来年も見たいなら、花が終わってから10〜20cm残して切る。中途半端に途中で切ると、花も脇芽も中途半端になります。
病害虫
アブラナ科なので、青虫(モンシロチョウの幼虫)とヨトウムシの食害を受けやすい植物です。とくに植え付け直後の秋は、葉に穴が空いていないか確認してください。数が少ないうちは手で取り除けます。
アブラムシも新芽や葉の裏に付きます。春に暖かくなると増えるので、とう立ちの時期はとくに注意します。放っておくと茎全体を覆うほど増えることがあり、そこから株が弱ります。
薬剤を使う場合は、アブラナ科の草花に適用のあるものを選びます。葉牡丹は見た目こそ観賞用ですが、分類上はキャベツと同じ仲間なので、適用作物の表示を確かめてから使ってください。
病気では、株が密集して蒸れたときに灰色かび病や軟腐病が出ることがあります。傷んだ下葉を株元に残さず、風通しをよくしておくことが予防になります。
避けたいのは、株の中心に水や枯れ葉をためることです。葉が重なる植物なので、中心が湿ったままだとそこから傷みます。水やりは株元へ、掃除は中心から。
夏越しと、来年も楽しむ
切り戻したあとの株は、夏をどう越すかが分かれ目になります。葉牡丹は高温多湿が苦手で、真夏の直射と蒸れで枯れることが多い植物です。風通しのよい半日陰に移し、水のやりすぎを避けます。
種を採る
花が終わると細長いさやができます。さやが茶色く乾いたら切り取り、風通しのよい日陰で乾かしてから種を出します。ただし、市販の苗の多くは交配種なので、採った種から同じ姿の株になるとはかぎりません。それも含めて楽しむつもりで採ります。
挿し芽で増やす
切り戻しで出た脇芽は、切り取って挿し芽にできます。下葉を取って土に挿し、明るい日陰で乾かさないように管理します。切り戻しと挿し芽を同時に進めると、翌年の株数を増やせます。
まとめと、次の一歩
葉牡丹は、種なら7〜8月、苗なら10〜11月。日当たりのよい屋外に置き、色づきはじめたら肥料を完全に止める。冬の水やりだけ控えめにすれば、春まで色を保ちます。
見ごろは11月ごろから3月ごろまで。暖かくなってとう立ちが始まると、葉の色は薄れていきます。「いつまで楽しめるか」は、とう立ちが始まるまで、と考えると分かりやすくなります。
そして、いちばん覚えておきたいのは春先です。伸びてきたのは終わりの合図ではありません。花が終わってから10〜20cm残して切れば、脇芽が立ち上がって踊り葉牡丹になります。
正月に飾った鉢を、そのまま捨ててしまうのはもったいない話です。春にひと手間かければ、来年の冬にはもっと見ごたえのある姿で戻ってきます。