
ゆったりと木にもたれ、こちらをじっと見つめる大きな瞳。オレンジ色の長い毛をまとったオランウータンは、アジアでただ一種の大型類人猿です。「オラウータン」とも書かれるこの動物は、マレー語で「森の人」を意味し、その名のとおり一生のほとんどを熱帯雨林の樹上で過ごします。
このページでは、当サイトが実際に撮影したスマトラオランウータンの写真とともに、名前の由来や3種類の違い、樹上生活の生態、オスの証「フランジ」、強い握力や高い知能、そして漢字表記の「猩猩」まで、オランウータンの魅力をまとめて紹介します。
オランウータンは「森の人」|名前の由来
「オランウータン」という名前は、マレー語のorang(人)+hutan(森)=「森の人」に由来するといわれています。もともとは奥地に住む人を指す言葉だったものが、森で暮らすこの類人猿を指す名として広まったと考えられています。英語でも「Orangutan」と表記されます。
オランウータンは、ヒト・ゴリラ・チンパンジーと同じヒト科に分類される大型類人猿の仲間です。アフリカに暮らすゴリラやチンパンジーに対し、オランウータンはアジア(インドネシア・マレーシア)の熱帯林だけに生息する、いわば「アジアの隣人」。丸くやさしい顔つきと、あまり派手に動かないおっとりした立ち居ふるまいが特徴です。
オランウータンを漢字で書くと「猩猩」
オランウータンは、漢字で「猩猩(しょうじょう)」と書きます。猩猩とは中国の古典に登場する想像上の生き物で、人のような顔をもち、赤い毛におおわれ、お酒を好むとされてきました。赤みをおびた毛のオランウータンがこの猩猩に似ていることから、その名で呼ばれるようになったといわれています。
この呼び名は仲間の類人猿にも受けつがれていて、毛の黒いチンパンジーは「黒猩猩(くろしょうじょう)」、より大きなゴリラは「大猩猩(おおしょうじょう)」と呼ばれることがあります。かつてこれらの大型類人猿が「ショウジョウ科」とまとめられていた名残でもあり、漢字を並べると3種のつながりが見えてくるのが面白いところです。
オランウータンの生態|樹上で暮らす“森の住人”
オランウータンは、樹上で生活する哺乳類の中で最も体が大きいとされる動物です。地上30mにもなる高い木の上で一日の大半を過ごし、枝から枝へと体を移します。そのため腕はとても長く、脚の1.5〜2倍ほどもあるといわれ、両腕を広げると2mを超えることもあります。手足の指は枝をしっかりつかむのに適した形をしています。
食べ物は果実が中心で、野生のマンゴーやドリアン、イチジクなどを好み、若葉や新芽、樹皮、昆虫、鳥の卵なども口にするといわれています。夜は木の上に枝葉を折り重ねてベッドのような「巣」をつくり、そこで眠ります。群れをつくらず単独で暮らす傾向が強いのも大きな特徴で、母親と子どもが長く一緒に過ごす一方、おとなのオスは基本的に単独で広い範囲を移動します。母子が寄りそう期間は平均7年ほどと、霊長類の中でも特に長いと報告されています。
オランウータンの種類(ボルネオ・スマトラ・タパヌリの3種)
オランウータンは長い間ひとつの種と考えられていましたが、現在は生息する島などの違いから3種類に分けられています。
・ボルネオオランウータン(Pongo pygmaeus)…ボルネオ島に生息。3種の中では個体数が最も多く、オスは大きなのど袋が目立ちます。
・スマトラオランウータン(Pongo abelii)…スマトラ島北部に生息。明るいオレンジ色のカールした毛が特徴で、フランジが横に平たく広がります。当サイトの写真はこのスマトラオランウータンです。
・タパヌリオランウータン(Pongo tapanuliensis)…スマトラ島のバタン・トル一帯だけに暮らす種で、2017年に新種として発表されました。大型類人猿の新種認定はおよそ88年ぶりで、推定800頭あまりと、現在もっとも絶滅に近いとされています。
いずれの3種も、森林伐採やパーム農園の拡大などで生息地が失われ、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで最も危機的な「近絶滅種(CR)」に指定されています。私たちがふだん使う紙やパーム油も、遠く離れた彼らの森とつながっているといわれます。
オスの証「フランジ」とは
おとなのオスのオランウータンには、顔の両わきに大きく張り出した「フランジ」と呼ばれるヒダができることがあります。これは強いオスの“しるし”とされ、すべてのオスにできるわけではありません。ほかのオスとの関係の中で「自分は強い」と優位に立ったオスにフランジが発達し、自信をなくすと小さくなることもあるといわれる、なんとも興味深い特徴です。
フランジのある立派なオスはメスに好まれる一方、フランジのあるオス同士は激しく争うこともあります。スマトラオランウータンのフランジは横に平たく、ボルネオオランウータンは大きなのど袋が目立つなど、種類によって顔まわりの印象が異なるのも見どころです。
オランウータンの握力・知能
樹上で全体重を支えて枝をつかみ続けるオランウータンは、非常に強い握力を持つといわれます。飼育下で太い鉄棒を曲げたといった逸話も伝えられますが、具体的な数値には諸説あり、はっきり確かめられているわけではありません。いずれにせよ、木の上の暮らしを支える力強い手であることは間違いないでしょう。
また、オランウータンは類人猿の中でも知能が高いことで知られます。木の枝を道具のように使ったり、森のどこにどの果実の木があり、いつ実がなるかを記憶したりするといわれ、その賢さは長い樹上生活を生き抜くための知恵といえます。
オランウータンは危険?人との関係
「オランウータンは人を襲うのか」「危険なのか」と気になる方もいるかもしれません。基本的にオランウータンはおとなしく、争いをあまり好まない動物とされています。ただし野生動物である以上、むやみに近づいたり刺激したりするのは禁物です。センセーショナルに語られがちなテーマですが、実際に彼らを最も脅かしているのは、むしろ人間による森の減少や密猟の側だといわれています。
オランウータンの個体数は、この100年ほどで大きく減ったと報告されています。彼らを守ることは、豊かな熱帯雨林そのものを守ることにつながります。
オランウータンの寿命
オランウータンの寿命は、野生でおよそ30〜50年、動物園などの飼育下では50年以上生きる個体もいるとされ、霊長類の中でも長生きな部類に入ります。メスは数年に一度、1頭ずつ子どもを産み、時間をかけてじっくり育てます。ゆったりとした暮らしぶりは、長い一生とも結びついているのかもしれません。
オランウータンに会える動物園
日本の動物園では、3種のうちボルネオオランウータンとスマトラオランウータンに会うことができます。多摩動物公園(東京)、旭山動物園(北海道)、王子動物園(兵庫)、市川市動植物園(千葉)などが知られ、愛媛県のとべ動物園では2種を見比べられることでも有名です。
ロープを綱渡りのように渡る姿や、フランジの立派なオスの貫禄は、実際に見ると写真以上の迫力があります。お近くの動物園で、ぜひ本物のオランウータンを観察してみてください。
オランウータンに関連する写真
気持ちよさそうに居眠りする姿や、遊具でくつろぐ姿など、オランウータンの写真をほかにもご用意しています。

