プリムラは、冬から春にかけて花壇や鉢を彩る花です。花の少ない時期に、赤、黄、桃色、白と、はっきりした色で咲いてくれます。
ただ、店頭には「プリムラ」という名前でいくつもの種類が並びます。同じプリムラでも、性質と手入れの勘どころが少しずつ違います。買ってから「思っていたのと違う」となりやすいのは、このためです。
この記事では、共通する育て方の基本を整理したうえで、種類ごとの違いと、育てる前に知っておきたい注意点までをまとめます。
プリムラとは|サクラソウの仲間
プリムラはサクラソウ科サクラソウ属の総称で、和名をサクラソウ、園芸店では西洋サクラソウとも呼ばれます。世界に500種以上あるといわれ、日本の花壇で見かけるのはそのうちのごく一部です。
本来は多年草ですが、日本の平地では夏の高温多湿に耐えられず、一年草として扱われることがほとんどです。「多年草と書いてあったのに枯れた」と感じるのは、育て方の失敗ではなくこの性質によるものです。
花言葉と誕生花は〈プリムラ・ポリアンサの花言葉、誕生花〉にまとめています。
種類の違いと見分け方
店頭でよく並ぶのは次の4種類です。買う前に、育てる場所と手入れの手間で選ぶと失敗が減ります。
| 種類 | 見た目と性質 |
|---|---|
| ポリアンサ | 花が大きく、株の中心にまとまって咲く。色数が多い。花壇の主役向き |
| ジュリアン | ポリアンサを小型にした系統。草丈が低く、鉢や寄せ植えに収まりやすい |
| マラコイデス | 細い茎が立ち上がり、小花が段になって咲く。こぼれ種で増えることがある |
| オブコニカ | 丸い葉に長い花茎。室内向き。茎葉に触れてかぶれる人がいる |
ポリアンサとジュリアンは大きさの違いで、性質はほぼ同じです。売り場で混在していることもあり、厳密に区別されないまま並んでいる場合もあります。マラコイデスだけは姿がはっきり違い、背が高く軽やかな咲き方をします。
このほか、桜に似た小花を咲かせるシネンシス、原種に近い姿のブルガリスなども流通します。いずれもサクラソウ属で、育て方の基本は共通しています。
この記事の写真はポリアンサです。以降の育て方は4種類に共通する内容を中心に、違いがある箇所はその都度ふれます。

苗の選び方と植え付け
苗の選び方
苗が出回るのは10月から3月ごろです。つぼみが多く、株の中心が詰まっているものを選びます。すでに満開の株より、これから咲く株のほうが長く楽しめます。
葉の色が薄い、下葉が黄色い、株元がぐらつくものは避けてください。売り場で暖房の効いた室内に長く置かれていた苗は、屋外に出したときに傷むことがあります。
植え付けと用土
水はけのよい土を使います。市販の草花用培養土でそのまま育ちます。鉢植えなら3〜4号鉢に1株、65cmのプランターなら3〜4株が目安です。株が横に葉を広げるので、詰めて植えると中心が蒸れます。
買ってきた苗をすぐ大きな鉢に移す必要はありません。根が回っていなければ、しばらくそのまま育てても大丈夫です。植え替えるなら、花が咲く前の10月から11月ごろが株への負担が少なくなります。
植えるときは、株の中心(クラウン)を土に埋めないように注意します。中心が埋まると、そこから腐りやすくなります。ポットの土の高さに合わせて浅めに植えるのが基本です。培養土や道具のそろえ方は〈花の育て方に必要なもの|道具・培養土・肥料ガイド〉にまとめています。
地植えにできるか
地植えもできます。寒さには比較的強く、霜が降りる地域でも屋外で冬を越します。ただし夏に枯れることを前提に場所を決めるほうが無難です。
植えっぱなしにする場合は、夏に半日陰になる場所を選びます。夏の直射が当たる花壇では、一年草と割り切って毎年植え替えるほうが結果的に手間がかかりません。
日常の手入れ
置き場所と日当たり
日当たりと風通しのよい屋外で育てます。日照が足りないと花付きが落ち、茎が間延びします。冬のあいだは日が低いので、夏に日陰になる場所でも冬は十分に日が当たることがあります。置き場所は冬の日当たりで決めてください。
霜や雪に当たっても枯れることはほとんどありませんが、花に直接霜が降りると傷みます。軒下や壁ぎわなど、上に何かがある場所に置くと花もちがよくなります。
室内で楽しみたい場合は、明るい窓辺に置きます。ただし暖房の効いた部屋に置き続けると花が早く終わり、株も弱ります。プリムラは寒さより暑さに弱い花です。オブコニカだけは他より寒さに弱く、室内向きとされます。
水やり
土の表面が乾いたら、鉢底から流れるまでたっぷり与えます。水は株の上からかけず、株元へ静かに注ぎます。中心に水がたまると、そこから傷みやすくなります。
冬は土の乾きが遅くなります。受け皿に水をためたままにせず、乾き具合を見てから与えてください。
肥料
開花期間が長い花なので、肥料を切らすと花が小さくなります。植え付け時に元肥を入れ、花が咲いているあいだは液体肥料を10日から2週間に1回ほど与えます。
花がら摘み
咲き終わった花は、花茎の付け根から摘み取ります。花びらだけを取ると茎が残って腐りやすいので、根元から引き抜くように取ります。枯れた葉も同じように取り除くと、株の中心が蒸れにくくなります。
花が終わったらどうする
4月から5月ごろ、気温が上がると花数が減ってきます。ここからの扱いは、一年草として終わりにするか、夏を越させるかで分かれます。
夏越しに挑戦する場合
花が終わったら、傷んだ葉と花茎を整理し、風通しのよい半日陰へ移します。水は控えめにし、肥料は止めます。鉢植えのほうが移動できるぶん有利です。
それでも暖地では夏を越せないことが多く、うまくいけば秋にまた芽が動く、という程度に考えてください。マラコイデスはこぼれ種で自然に更新することがあり、株を残すより種に任せるほうが確実な場合もあります。
増やし方
夏を越した株は、秋に株分けで増やせます。株元から自然に分かれている部分を、根を付けて切り分けます。種まきは6月から7月ごろですが、発芽適温が20度前後と低く、家庭では管理が難しい部類に入ります。
病害虫
つきやすいのはアブラムシとハダニです。アブラムシは新芽やつぼみに、ハダニは乾燥した時期に葉の裏につきます。数が少ないうちに取り除くか、草花用の薬剤で対処します。
病気では、株が蒸れたときに灰色かび病が出ます。花や葉に灰色のかびが広がり、そこから傷んでいきます。枯れた花や葉を株元に残さないことが予防になります。
もうひとつ、ナメクジにも注意します。夜のあいだに花や新芽を食べるので、朝になって花びらが欠けていたらこれを疑ってください。鉢の底や受け皿の裏に隠れていることが多く、置き場所を少し高くするだけでも被害が減ります。
枯れる原因で多いのは、水のやりすぎと、株の中心に水がたまったことによる腐りです。次いで夏の高温。冬の寒さで枯れることは、暖地ではほとんどありません。
育てる前に知っておきたいこと
プリムラのうちオブコニカには、育てる前に知っておいたほうがよい性質があります。
茎や葉に触れると、人によっては手がかぶれることがあるとされています。すべての人に起こるわけではなく、体質による個人差が大きいものです。ただ、園芸店では他のプリムラと並べて売られていることが多く、知らずに買う方もいます。
植え替えや花がら摘みで葉に長く触れるときは、手袋を使うと安心です。触れたあとに赤みやかゆみが出た場合は、こすらずに洗い流し、症状が続くようであれば医療機関にご相談ください。本記事は一般的な情報をまとめたもので、医療上の助言ではありません。
なお、この性質が知られてから刺激成分を減らした品種も流通しています。気になる方は、売り場の表示を確認するか、ポリアンサやジュリアンを選ぶという方法もあります。
寄せ植えと冬の花壇
花色がはっきりしているので、寄せ植えでは色の要になります。同じ時期に出回るパンジー、ビオラ、葉牡丹、アリッサムなどと合わせやすい組み合わせです。
草丈の低いジュリアンは鉢の手前に、背のあるマラコイデスは後方に置くと形がまとまります。株の中心が蒸れないよう、詰めて植えすぎないことだけ気をつけてください。
まとめと、次の一歩
プリムラは、日当たりのよい屋外に置き、株元へ水をやり、開花中は肥料を切らさない。この3つで11月から4月まで咲き続けます。寒さより暑さに弱い花なので、暖房の効いた室内に置き続けないことが長持ちのこつです。
植え付けは10月から12月、開花は11月から4月、花が終わるのが4月から5月。夏をどうするかを決めるのが5月、という流れになります。半年以上咲き続ける花なので、冬の花壇では働き者の部類に入ります。
夏を越すかどうかは無理をしなくて構いません。一年草として毎年新しい株を迎えるほうが、結果として花壇はきれいに保てます。
花の少ない時期に、玄関先にひと鉢あるだけで印象が変わります。春まで長く咲いてくれる、冬の花壇の働き者です。